ちいさくても滲みわたる声に

満足そうな鼻を持つ君に
水をさすようで悪いな
君の鼻の渇きを癒してあげたくてね

歩み寄る距離は意外にも遠く
果てのない砂の道を旅するようだ
やっと見えたと思ったら
それは 君の長い鼻だった

踏みしめるように歩めば
そこに咲く花もあるだろうに
どうして そんなに急ぐのだろう
君は君になればいいのにな
君以外のものになろうとするから
孤立する汽車に飛び乗るのかな

心に響かない声は NOISY
ちいさくても滲みわたる声に
耳をすませて
それを 胸に押し当てて
03:18 | | comments (8) | edit | page top↑

靴ひも結んで

気にとめることのない僕の窓辺に
「勇気」と名付けた風が来る
抱きしめれば嬉しそうな和音と
胸の中でくりかえした言葉と

それが君だとわかっていたら
もっと素直になれるのにな
これが僕だとわかっていたら
ほころんだ春があるのにな

さあ!靴ひも結んで
今日こそ 君に会いに行こう
すり切れた膝の砂をほろって
強く強く踏み出そう

君のそばで眠る愛しい宝物を
僕の宝物として愛せるだろうか
突き放せば崩れそうな誇りと
もろくなった彼らとの絆と

さあ!靴ひも結んで
今日こそ 君を迎えにいこう
躊躇してる僕の肩をたたいて
強く強く羽ばたこう

いつか僕と君の宝物が
「家族」というものを振り返るとき
団欒の内側にある僕の覚悟を
試されるときが来るのかな

さあ!靴ひも結んで
今日こそ 君に会いにいこう
すり切れた膝の砂をほろって
強く強く踏み出そう!

01:04 | | comments (6) | edit | page top↑

その声もなく

100度打つて
みなしごの膝を折る
腹の底まで打ち叩く
話もなく
言葉もなく
その声もなく

魂の値打ち
正しいてんびんとはかり
よるべないもの
話もなく
言葉もなく
その声もなく

こころの低い人
汚れを洗わない
パンを運ぶ車
話もなく
言葉もなく
その声もなく

あふれ出る水
すり減ったかかと
よろける歩み
話もなく
言葉もなく
その声もなく

水を衣につつみ
月は満ちることなく
こころの直ぐな風
話もなく
言葉もなく
その声もなく

くずれる膝を立たせ
裁きの台をなぞる
水のない川
話もなく
言葉もなく
その声もなく

01:48 | | comments (4) | edit | page top↑

空に向かっておじぎをしよう

場ちがいかなと思う
ぼくの居る場所にきみが居ない
羽根があればね
空をわたっていけるのに

ふさわしくないという意味じゃなく
きみのお似合いはきっとぼくだから
声の色を確かめながら
空に向かっておじぎをしよう 

屋根の上に放り投げた靴が
上を向いたら笑っておくれ
もしも下を向いて泣いていたら
雲よ!おまえに頼みたい

きみのお似合いはきっとぼくだから
声の色を確かめながら
空に向かっておじぎをしよう
空に向かっておじぎをしよう
23:36 | | comments (2) | edit | page top↑

傍観者

積み重なった無造作が
ふやけきった自己規制の首をしめる
放っておいてほしい夜なのに
この風は相変わらずおせっかいだな
昨日でもなく 明日でもない
ぼくは今日のために壊れていく

ねぼけ顔の水銀灯
側溝をわたる雪どけの水
おきざりのような速さを思い知る 

揺れ動く落ち着きのない膝は
嘘をついている子供の眼のようだ
押し寄せる不安が山積する机
遠くから眺める欲のないため息
昨日でもなく 明日でもない
ぼくは今日のために壊れていく

錆びついた身の丈のヒンジ
自分しか見えない汚れた眼鏡
喜びに似た怠惰を抱きしめて

見て見ないふりの傍観者
うわの空に浮かぶ無責任
「関係ない」とは言わないが
ぼくは 3時から始まる女子マラソンの
代表選手の発表のほうが
気になってしょうがないんだな
23:53 | | comments (10) | edit | page top↑

ポケットの中のげんこつ

ほこりにまみれた空を見上げ
舗道に横たわる風を見てる
ぼくはここに居るんだと
埋もれるぐらい背をのばして

ぼくは誰になるのだろう?
べつにぼくじゃなくてもいいんだよね?
しょせん絵の具が同じなんだもの
書き残すカンバスに「らしさ」なんか

咲き並ぶ道ばたの主張を
やさしさの順に並べ換えてくれ!
聞こえのいい耳にすべる灰色の風よ
ぶら下がる主張に水をやってくれないか!
乾ききったぼくの喉に「らしさ」なんか
書き残すカンバスに「らしさ」なんか

なぁ 見てごらん
こんなにも こんなにも大きくなった
ポケットの中の ぼくの げんこつを






22:24 | | comments (2) | edit | page top↑

月が笑う

もう君のまわりには誰もいない
誰もいなくなった
こころない道ばたの石ころでさえ
君になにも囁かない

囁かれるとその気になるから
いつも月に笑われる
だけど月は翳りのない笑みだから
見えるところしか照らさない

月が笑う
カラカラと
ただ笑う

いばって歩く君の足は
角ばり 誰よりも細く
山間に響く君の怒声は
耳に騒ぐが そう あまりにも か細い

歯ぎしりと暮らす無精ヒゲに
君の孤独を映す黒い影がある
だけどその影の凸凹に
合わせて歩く風はない

月が笑う
カラカラと
ただ笑う

もう君のまわりには誰もいない
誰もいなくなった
00:24 | | comments (4) | edit | page top↑

やっと気づいて

どん底に降りてゆく階段を
ゆっくりと歩いている
あいつに別れは告げてきた
約束の旅はできそうにない
立ち止まることのできる階段ではない

このまま消えてしまいたいと
思える証拠にまだ生きている
まったく往生際がわるい
雨の降る気配に眼をさまし
囚われていることに気づく

「自由」とか「幸せ」とか形の無いもの
無性に欲しくてたまらない
どうして どうしてだろう
絶望に堕ちてみる夢は
底のない湖のように果てしない

「自由」とか「幸せ」
存在するものではなく感じるものだとしたら
それは
「不自由」そして「不幸福」と感じる心の中にある
ひとにぎりの空気のようなものであり
雲の切れ間に見える一瞬の光のようなものだ

朝がくるたびに生きていることに気づく
今が「どん底」と思える「今」は
きっと「どん底」ではない

23:55 | | comments (2) | edit | page top↑

奇妙な同居人

常識と非常識
同居
善と悪
ごちゃ混ぜ
奴は俺を
殺そうと
俺も奴を
狙う
奇妙な同居人

いつだって
ヤレルはず
今だって
ヤレルはず

鏡の中の
俺にそっくりな男
いや
もっと恐ろしい
存在

いやでしょうがない
だけど
好きでしょうがない
俺にそっくりな
奇妙な同居人
23:16 | | comments (2) | edit | page top↑

君の座る椅子の上に

ポプラの足に腰をおろして
動かない雲を眺めている
絵空事のような毎日に
君の座る椅子がある

ぞっき屋の角を曲がると
北大通りに続く道がある
キャンパスに沢山の花が咲く
君は僕を覚えているだろうか

365日も待って
やっと咲いた花
文句なしに美しい!
そして
それは確かに
心の内側に散る

君の座る椅子の上に
静かに
しずかに
降り募る
00:33 | | comments (2) | edit | page top↑

シェビーをころがして

白いおんぼろシェビーをころがして
茜色の空に続く一本の道
あの街のおせっかいには飽き飽きした
うかれすぎて はしゃぎすぎる
巷の歌がラジオから流れる
呆れたもんだと口笛をふく
風がひゅーひゅー追い越していく
ひとり取り残された気分になる

のらりくらり生きてきたから
随分たくさんのものを無くした
だけどゴミ箱に捨てちまったわけじゃない
ただ見失っただけのこと
動けばきっと風がふく
留まることは萎えることだと
酔いどれトムは教えてくれた
独りつぶやくトムのブルースを

一度きりの旅だとわかっていても
人はいたずらに生きたがる
ちっとも悪いことじゃない
道草を食い 戸惑い 雨に打たれても
金縛りにあったように走り続ける
自分を探しに旅に出るんだと
まだ見ぬ夢に ただぶらさがる
もう この街には帰らない

シェビーをころがして
 
10:28 | | comments (2) | edit | page top↑

僕の靴と君の赤い足

靴がほしい
穴があいた底の抜けた靴に
雨が沁みている
素足のままで歩けるのに
僕は新しい靴がほしい

髪の毛の芯まで
雨が沁みている
犬が啼いている
哀しい目をした犬が啼いている
足が真っ赤に濡れている

君にパンを買ってやれるほど
僕は金を持ってない
だって靴を買うのだから
外套の中に入っておいでよ
雨がやむのを待とう

温かい
君とくっついていると
生きていられる
ボロ布でも見るように
白い目をした傘が通る

ポケットの小銭
有り金はたいてパンを買おうか
分け合って食べれば
もっと温かくなれるはず
靴はまたこの次でいい

あっちから見てもこっちから見ても
僕らはこうして生きている
濡れた外套の中で息をしている
雨がやんだら今度は傘を探そう
誰かが忘れた立派な傘を

君の足を見ていたら
なんだかそんな気になった
素足のままで歩いていける
今はこうして雨のやむのを待とう
僕の外套にくるまって

靴は
いちばん
最後でいいや
22:16 | | comments (2) | edit | page top↑