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もうひとつのオールウェイズ

少年は100円玉を1個にぎりしめて
母さんの言った通りの食堂に来た
100円で食べれるものならなにを選んでも自由だと
食堂のおばさんは優しそうに笑った

いつも母さん土曜日は夜中まで帰ってこない
飯場の飯炊き 銭湯の掃除 もうひとつ土曜日は居酒屋で働いた
すり切れた服を着て長靴を履いた母さんは頼もしかったな
少年は土曜日の夜がくると泣きたくなった
100円玉机に置いて「行ってくるね、なんでも食べてね」とメモ紙に
少年は9時に閉まるこの食堂に毎週8時に行くことに決めた
〈全員集合〉が店のテレビで見れるからだ
ひとりで観る〈全員集合〉はつまらない
母さんとふたりで笑える土曜日が好きだったのに
食堂のおばさんが「何だバカヤロー!」と荒井注の真似をして笑かせてくれたが
少年はこのおばさんの顔をどうしても思い出せない
菅井きんに似ていたように思うのだが

少年は年老いた母さんを重荷だなんて思っていない
だけど母さんは少年に気をつかい老人ホームの案内書を勝手に取り寄せたりする
「ばかだな、なにも心配はいらないよ!」
少年はあの頃の母さんの歳をこえていた

ある日狸小路の古い食堂に母さんと行ったことがある
母さんは「へえ~、いろいろあるんだねえ」と感心した
少年は日払いの金があるから「何でも食え!」と威張っている
「100円でなくてもいいよ母さん、なんでも」と少年が言うと
「ああ、そんなこともあったね、根に持ってるのかいお前、、、」と言う
短冊のメニューを眺めると当たり前だが100円で食べれるものなんかない
「、、、高いねえ」と母さんが言う
「時代がちがうよ母さん、いいからなんでも食べて!」
480円の野菜炒め定食がいいと母さんがいうので少年もそうした
美味そうに食べる背中の丸い母さんは「ありがたい、、、」と泣いた

あの頃の100円はいまどのぐらいなんだろう?
もしかしたら1000円ぐらいの価値があるのかも知れないな
少年は野菜炒め定食を食べながらなにか言おうとしたが思い出せない
それはきっと言葉でなんか言い表すことのできない100円の重みなんだと思う

「ありがたい」はこっちのほうだよ、母さん
少年はくしゃくしゃになった老人ホームのパンフを
くるくるまるめ 空に飛ばした




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13:56 | GOOD ! | comments (6) | page top↑

タクシードライバーの日報

この街は俺の街じゃないな
あちこちに淋しそうな窓がある
手をふるのは待ちぼうけの女
そこで果てるほど俺は落ちぶれちゃいねえ

自慢の歌が聴こえる酒場がある
そこは古ぼけたネオン
渇ききった音にバーボンの香り
ウインクすればついてくる女がいた

つまらない事件をしょいこんだ俺は
いつも帽子を深くかぶって走った
街は俺のどこに雨を浴びせる
雨宿りに情をいれることはない

なにが正義なのか唄えるやつをここ連れてきな
俺はそいつの上着の内側にある魂胆を指差すだろう
言葉につまりながら唄う歌ほど面白いものはない
しらけた客は苦い酒を飲むのだろう

きのうの罪が今日の夢につながるのなら
罪を犯したやつだって幸福になれることになる
悲しみに打ちひしがれた独房の窓に
突き刺すような黒い雨が降る

ここから見えるすべてのものを
みんなこの手でぶち壊してしまえ
無責任が服を着た役人の眼をくぐりぬけ
うまくやれればそれでいいのだ

ああ ! この街は俺の街じゃないな
救いようのない偽善ばかりが胸をはっている
地べたにこびりついた指紋を拭き取り
俺がいた証しなど消してしまうがいい

べつに俺じゃなくてもいいなら
わざわざ俺を選んで手をあげることはない
猫を乗せたタクシーのことを想いだした
のどを鳴らす猫のような客を探すのだろう

「お客さん、どこまで走りますか?」
俺はタバコを吸いながら客に言った
「この車、禁煙ですよね運転手さん!」
「んん?いやなら他を探せよな!」

こめかみにあてた銃口は嬉しそうに唄った





07:17 | VERY GOOD !! | comments (3) | page top↑

しょぼくれて歩くこの子に

しょぼくれて歩くこの子は
ほんとうのことを知っているか
ほんとうのことを言えば
泣き出してしまうのか

雲より早い自分の影を
ぽんっと 跨いで
おおきく 大きくなあれ
大きくなったら何になろう
雲より早い自分の影を

君の帽子はつばが長い
泪を飲み込む不思議な帽子
ぼくの影を飲み込んで
ぼくは君になるのだろう
さあ 君になろう

幸多かれ!
幸多かれと祈ろう!

しょぼくれて歩くこの子は
ほんとうのことを知っているか
ほんとうのことを言えば
泣き出してしまうのか

幸多かれ!
幸多かれと祈ろう!

しょぼくれて歩くこの子に
ほんとうのことを教えてやろう





11:18 | GOOD ! | comments (0) | page top↑

青春というリアル

これほど滑る靴底はなかった
ずいぶんすり減ったかかとだった
くりかえし責められるとイヤになった
それほど僕は疲れていた

この街に休まる場所はなかった
だれの腕でもいいいからその中で眠りたかった
愛してくれとは言わなかった
言葉はうやむやと果てていく空だった
君に会いたいと思った
君のほうがよかった

僕らしくないのはわかっていた
夕暮れはいつのまにか黒くなった
僕あての手紙がないか郵便受けをのぞいた
探し物は自分自身の魂だった
なにかが違っていた
誰かが笑っていた
笑うしかなかった

過ぎて行く日々は遠い遠い道のりだった
だとしたらこれからの道はうんざりとした歩みだった
公園のはしっこに古びたシーソーが見えた
ぎーぎーときしむ音だった
僕は帽子を深くかむった少年を見た
シーソーはいつも少年のほうに傾いた
ひとりでシーソーはむずかしいと思った





09:08 | VERY GOOD !! | comments (2) | page top↑
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