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話をする老人

大好きな場所があった
黄色い葉っぱが敷き詰める細い道だった
斜めから射し込む光がまぶしい
アスファルトの小径に

古いカントリーマンが停まっていた
絵を描きに来ている老夫婦の車だった
ここから見える農学部の旧校舎
馬の手入れをする学生がいた
子供のように喋る老人
うれしそうに筆を滑らせながら

わたしはポプラの根に腰かけ
ふたりの話を聴いていた
かれらの眼は優しかった 
総理の髪型は変だとか 相撲の話
若いころの自慢や年金の話まで
とくとくと喋り続けるのだ

何年経つだろう
相変わらずわたしはここにいた
10インチのタイヤをまとうカントリーマン
かれらの饒舌が聴こえない
ふたり描いた絵のように
そこに収まる構図があった
今日も馬の手入れをする学生がいた



いつまでも夢を追いかけているわたしは
団欒とよばれる場所を探していた
年老いた母はわたしを探し
かつて自分だったわたしに話かけるのだ
わたしは夢を食んで太るばかりで
母の話に耳を傾けようとしない
母はうわの空のわたしに話すのをあきらめ
なにも喋らない口になる
花麒麟のてっぺんに花が咲いたとか
給付金で炊飯器を買ったとか
ささいな出来事を話すあの老夫婦のように
とくとく とくとく
わたしに話かけるのに

悔いていた
もっと母の話を聴いてやろうと思った
わたしがいまそうであるように
母は話がしたいのだ
話をしよう
もっと話をしよう
そうだねそうだねとうなずいて
そうだねそうだねとうなずいて
そうすればきっと
そのちょっとした時間を
母は楽しみに生きられると思うから



好きな場所があった
黄色い葉っぱが敷き詰める細い道だった
わたしはあの饒舌が聴きたかった
絵を描きながら喋るあの老夫婦に会いたかった

話をする老人

アスファルトの小径にモノクロの影
眼を閉じて溜め息をひとつだけついてみる

想い出は
色褪せることはない
想えば想うほど
それは輝き
想えば想うほど
それは

小径を歩く凸凹の影がある
イーゼルを抱え 寄り添うように
とくとくとくとく喋りながら
とくとくとくとく喋りながら
すリ切れた古いネガの中を
モノクロのネガの
00:52 | VERY VERY !!! | comments (5) | page top↑
ぼくの朱色は | top | リバーと呼ばれる街

コメント

# No title
過去の情景と目の前の想いが重なって
この作品が絵画のように見えました。
詩の構成の専門的なことは分かりませんが、
上段、中段、下段と遠近法で描かれていて、
過去の絵の具の上に、また今の絵の具が載せられて
なんともいえない奥深い味わいのある絵です。
「好きな場所」にどれ一つとして欠かせないもの、
ポプラの根に腰掛けている男性、眼差しの先の
過去の老夫婦、過去と現在を繋ぐ「会話」という
キーワード。
その絵は再びHOBOさんの瞳を通して過去の
映像として古いネガに焼きつく。
モノクロは封じ込められた色を感じようとすると
より、発色をしますよね。写された色以上に。

お母さんのお話、聴いてあげてくださいね^^
by: nora | 2009/09/29 21:40 | URL [編集] | page top↑
# noraさんへ
会話というキーワード。
「話をする老人」という僕の小説の短縮版です。
常に会話をしていれば、痴呆になるヒマなどないと思うのだが。
会話がなくなると、内側に問いかけることが多くなるので、
こころ病むのかなと。
そうだねそうだねとうなずいて。

もっともっと風景の見える作品をと思い、カメラを持って
歩くことが多くなりそうです。色がつく季節からモノクロな冬。
北の街はすでに冬の気配。秋を通り過ぎて冬が来そうな勢いです。


HOBO
by: Mr.HOBO | 2009/09/30 00:24 | URL [編集] | page top↑
# 風響樹(ぽぷら)
小説の短縮版だったんですね
驚きました
以前、さとう愛子さんが対談で
人生は美しいことだけ憶えていればいいと凛とした姿勢でおっしゃっていたことを思い出し、85歳の新作は確か、恋愛小説であると
滑稽な恋愛と

想いでは/色褪せることはない/想えば想うほど/それは輝き/想えば想うほど/それは

うなずいてしまいます

 私は絵を描くときあるがままの姿、形を観、こころの中ではデフォルメして描いています
 とくとく とくとく という表現が話しをする老人にとっても合っていますね
また高いポプラの木は風が友だといい空中で響き合っています

 今日、私は母にやっと携帯電話を贈りました
by: t.gray | 2009/09/30 16:23 | URL [編集] | page top↑
# t.grayさんへ
お母さんに携帯を!
それは素敵だ!
話ができるといいですね、たくさん。
一枚の絵をそこに置いて詩を書くことが多くなりました。
頭で考えることができなくても眼で見たものをその通り書く
ことはできますものね。
古くなると、たいがいのものは色褪せるのですが、想い出だけは
そうじゃないらしいですね。それどころか逆に、想うほど光り輝く。
古くなるほど光るものなんか、そうあるもんじゃない。
だから大事にしなくてはと思います、想い出。

HOBO
by: Mr.HOBO | 2009/10/01 00:28 | URL [編集] | page top↑
# 管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
by: | 2009/10/03 22:38 | URL [編集] | page top↑

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