愛していると言ってくれ

自分のことしか見えない男がいる
言い訳のない従うだけの女がいる
顔色を伺いながら笑う子供がいる
金のことしか喋らない社長がいる
正直者を蹴飛ばす組織がある
青空の見えない欲望の窓がある

愛していると言ってくれ

自分らしさを刻むタイムカードがある
悲しみの歌をうたうリズムがある
ロマンティストだけが集うアジトがある
足並みそろえる不平等な風がふく
ノートの上で笑う整った数字がある
膝の上でなげく無口なコブシがある

愛していると言ってくれ

警官に殴られ項垂れるマニアがいる
傍観者の眼をクギづけにするネガがある
モノクロに口ずさむフレーズがある
風のない丘に咲くなけなしの夢がある
犯罪者を裁けないシワだらけの指がある
街中を闊歩する見え透いた嘘がある

愛していると言ってくれ

だぶついた下あごを撫でる誘惑がある
客引きの袖にしがみつくリアルがある
好きでもない男に抱かれる女がいる
こみあげる悦びにしがみつく恋がある
今日と同じ掛け替えの無い明日がある
明日のために壊れていく魂がある

愛していると言ってくれ 
01:20 | | comments (2) | edit | page top↑

決心

肩が凹むほどの重い荷を
公園のベンチの端っこに座らせる
すり減った踵を気遣いながら
足元の石ころに声をかけよう

ポケットのハーモニカを取り出して
こめかみを過ぎる風をうたおう
「元気か?」と問いかければ嬉しそうだが
近寄れば随分さびしそうだな

歌を唄える仕事をみつけたんだ
酔っぱらい相手の小さな店だけどね
サヨナラを呼び止める風がある
それが君だといいのにな


君の宝物を連れて旅をしようと
守れない約束はしなければよかったな
やっとここまでやって来たのに
やっぱり団欒の中には座れずに

歌を唄える仕事をみつけたんだ
酔っぱらい相手の小さな店だけどね
サヨナラを呼び止める風がある
それが君だといいのにな





00:58 | | comments (0) | edit | page top↑

男と女のバラッド

すこしだけ
雨宿りのつもりが
軒下で朝をむかえることになる
誰の傘でもよかったが
居心地のいい傘になる

雨は心に紐を通して
決して離さない結び目をつくる
結び目の裏側に手をのばし
哀しそうなリフをもてあそぶ

雨戸を開けて
白茶けた空を見上げる
おきざりのような時を知る
いつか放り投げた上着に
住み着いた風のように
強く抱きしめるほど
空しさだけが露出する

ああ!

この居心地のいい
傘の中で眠りたい
誰の傘でもよかったが
できれば
きみの傘がいい
00:54 | | comments (4) | edit | page top↑

神楽岡想い出通り

春の風に乗っかって
君のドアをたたいた
開きっ放しのこの窓から
逃げてしまったのかい
カーテンが風に揺れてる
トムのポスターが笑ってる
時間だけが床に丸まってる
何も変わらない僕がいる

神楽岡想い出通り
いっぱい春を持って来たのに
神楽岡想い出通り
今日だって青い空なのに

タンポポの葉っぱが揺れてる
春がこんなにまぶしい



四条通りをつっきって
底の抜けたビートルで
美瑛の町が見える丘まで
飛んでったのかい
かげろうがそこに立ってる
少しだけ風が吹いてる
石ころがブルースをつぶやいてる
何も喋らない街がある

神楽岡想い出通り
何もいい事なかったけど
神楽岡想い出通り
どうしてだろう君が居るようで

バス停の影が揺れてる
胸がこんなに切ない
神楽岡想い出通り
こんなはずじゃなかったんだ
神楽岡想い出通り
今日だって長い夜なのに

街灯がゆらゆら泣いてる
君がこんなに恋しい
春がこんなにまぶしい

07:27 | | comments (2) | edit | page top↑

自転車に乗って

川の流れに沿って
君の働く小さな店まで
小一時間歩いたら夕陽が沈む
店の横に君の赤い自転車
ふたり乗りして 帰ろう

「ずっと一緒にいようね」って
君と指切りした
エプロン姿の君が手をふる
「約束どおりむかえに来たよ」
ふたり乗りして 帰ろう

自転車に乗って 口笛を吹きながら
リンリンとベルを鳴らし 僕のうちまで
帽子をかぶり
おそろいのスニーカー
すこし大きいスニーカー

このまま時間が止ってしまえばいいと
僕は空に向かって ため息をつく

ああ 野暮ったいくらい
君が 好きだ。


07:46 | | comments (5) | edit | page top↑

古い靴が乾いたら

明日 風が吹いたら
君に会いに行こう
昨日読んだドストの本を
届けてあげよう
持てないものは全部捨て
こんなに軽くなった
何度も雲を乗りかえる
待ちくたびれて泣きだす前に
君に本を届けよう
ドストの本を届けよう


明日 雨が降ったら
ここで君を歌おう
中まで沁みた古い靴の
手入れをしよう
想うほどそれは輝いて
色褪せることはない
やがて夜が遠くなる
泣き疲れて眠りだすころに
ぼくの靴は乾くだろう
そして大地を蹴るだろう


何度も雲を乗りかえる
夢からさめて起きだす前に
君に会いに行こう
古い靴が乾いたら
13:36 | | comments (10) | edit | page top↑

ぼくがゼロになったら




小窓から見下ろすと
地面に映る飛行機の影がある
うす気味悪くなって眼をそらすと
すぐそこに大きなプロペラ
紺碧に飲み込まれ
ゼロになってしまえたらな

ぼくがゼロになったら
影だけは残り地上を照らすのかな
透き通った影の中に
輪郭の無い深い悲しみが

サンダルをひっかけて
プランのない旅をしたいな
いいかげんな奴らと肩を並べて
愚痴だらけのガムを噛みながら
明日のことなんか!
人生は死ぬまでの暇つぶしだ
きっとそうだよ
ねえ!そうだろう?

鉄のかたまりが空を飛ぶ
上からしか見えないものがある
従うしかない旅の終わりに
今日がふさわしいのなら
下りてしまおうかな

小窓から見下ろすと
地面に映る飛行機の影がある
翼をひろげた鳥のようにも見えるが
すぐそこに大きなプロペラ
紺碧に飲み込まれ
ゼロになってしまえたらな
23:54 | | comments (8) | edit | page top↑